極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「今夜は君を帰したくない」


そう告げた唇が、再び私の唇を強引に塞いだ。


‟嫌なら思い切り突き飛ばして”


でも、今の私には不思議とそれができなかった。

身体が固まっていて動けないわけではない。

抵抗しようと思えばできるのに。

千紘社長のキスを受けながら、自然と私の両手は彼の背中へとまわり、スーツの上着をぎゅっと掴む。


‟今夜は帰したくない”


経験はないけれど、その言葉に含まれている意味を理解できないほど私は子供じゃない。

しっかりとわかっている。

わかっていて、受け入れようとしている自分がいる……。

私へのキスを次第に深くしながら、千紘社長の指が押したボタンは四十二階。

そのフロアにあるのはたぶん彼の部屋だ。




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