モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「逆に考えたら、明らかに格下だと思う私にだから言える愚痴があると思いませんか? 私的には、ここはストレス発散の場として使ってもらっても構わないと思ってるのですが」
「だったらそういう説明をちゃんとポスターに書いておきなさいよ! それなら受け取り方が変わるし、今よりはひとが増えるかもしれないわ」

 なぜかアナベルにアドバイスをもらい、私はさっそく今言われたことをあとで実行しようと心に決めた。

「アドバイスありがとうございます。では、お待たせしました。アナベル様のお悩みはなんでしょうか」
「そっ、それは……そのっ……え、えーっと」

 私が聞くと、急にアナベルは体をもじもじさせる。
 声も小さくなり、ぽっと頬をピンクに染めている様子を見て、私はアナベルの相談したいことをすぐに理解した。

「恋のお悩み、ですか?」
「なぁっ! なんでわかったの!?」

 アナベルは後ずさりびっくりしている。あんなにわかりやすい態度をとられて、果たして気づかないひとがいるのかが疑問だ。

「……バレたなら話は早いわ。私、好きなひとがいるの。でも、そのひとの好みのタイプと私は真逆と聞いて、どうしたらいいかわからなくて……」

 アナベルの好きなひとも察しがつく。多分、マティアスのことだろう。
 小説でもアナベルはマティアス一筋だったし、そのせいで、マティアスの想い人であるエミリーをいじめていた。マティアスのタイプがエミリーのような清楚で可憐なイメージの女性ならば、たしかにアナベルは見た目も派手――というか華やかだし、気が強い女王様のようなイメージが強い。

「わかりました。タロットカードを使って占ってみます」
「お、お願い」

 私は自分のタロットカードを使い、簡単な占いを開始する。
 娯楽のひとつとして寮に持って行ったものの、前世の記憶を取り戻すまではまったく触ってなかったので、カードはまるで新品のようにきれいだ。

 私がカードを並べていくのを、アナベルは神妙な面持ちで見つめている。その様子は恋する乙女そのもので、なんだかかわいく思えてきた。

「……ワンドのクイーンが出てるわ」
「それっていいの? 悪いの? ど、どうなのよ!」

カードをめくり、私は急かされながらアナベルに占い結果を伝える。

「正位置で出てるし、今のアナベル様はとてもいい運気といえます。いろんな男性から注目を浴びてる時期で、恋の進展も望めると、カードからは読み取れますよ」
「本当!? ……よかった。ま、まぁ私が男性から注目を浴びるのはいつものことだけど!」

 アナベルは安心したのか、ほっと胸を撫で下ろしている。

「でも、本来なら今のアナベル様は悩んだりしないで、ポジティブでいられるはずです。素直でありのままの……あ」
「なによ?」
「わかりました。そのままでいいんですよ!」
「えっ? ど、どういうこと?」
「相手の好みがちがうからって自分を変えたりしないで、アナベル様はありのままのアナベル様で相手にぶつかっていけばいいんです。そんなアナベル様の姿は、きっと想い人に魅力的に映ると思います」

 恋に悩むアナベルがかわいくて、私はおもわず熱のこもったアドバイスをしてしまった。

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