モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 昨日、中途半端なまま終わりにしてしまった修復作業の続きをするため、私は今日も倉庫へと向かった。
 今日はおにぎりを作る日ではなかったので、今朝はレジスと顔を合わせていない。レジスと会っても平常心でいられるよう、今日もシピとしてレジスに会いに行って、レジスに慣れておこう。
 そう思い倉庫の扉に手をかける――が、なぜか扉は開かない。
 何度も開けようと試みるが、どうやら中から鍵がかけられているようだった。誰かが中にいるのだろうか? 耳を当ててみるが、話し声などは一切聞こえてこいない。そもそも、今は使われていない倉庫に用事があるひとなんていないだろう。中でなにか物が倒れて、扉を開ける妨げになっているのかもしれない。
 外側から開ける鍵を私は持っておらず、鍵をきちんともらっておけばよかったと今さら後悔した。理事長か校長に言わなければ、扉を開けることは不可能だ。
 今は昼休みの時間帯で校内に入るわけにはいかないし……あ、マルトさんに言って、理事長に鍵をもらえるよう連絡を入れてもらえばいいか。
 それに、もうすぐレジスが来てしまう。私がここにいたらなにをしているか怪しまれそうだし、ここは一旦退散したほうが――。

「フィーナ?」

 私の思惑とは裏腹に、背後から聞こえたのは間違いなくレジスの声だった。
 
「レッ、レジス!?」
「なにしてるんだ? こんなところで。そういえば、前もここでフィーナに会ったよな」
「え? あ、そ、そうね。私はその……マルトさんに言われて! 実はこの近くにある生えている野草が食べられるらしくてね! こっそり探しにきてたの! 停学中だから誰かに見つかるとまずいから、内緒にしててくれる?」
「ああ、そういうことか。わかった。内緒にする」

 咄嗟に思いついた嘘を言うと、レジスはあっさり納得していた。

「内緒にするかわりに、ひとつ頼みごとを聞いてくれるか?」
「え? ええ。なに?」

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