モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「とぼけないで。どうせエミリーから全部聞いてるんでしょう? ……もう私に話しかけてこないで。私もレジスに近づかないから」
「どうしてそうなるんだ! フィーナ、俺の話を聞いてくれ。なにか勘違いを――」

 すがりつくように、さっきより強く私の腕を掴んだレジスの手を振り払う。レジスは驚いた顔をして言葉を失くした。

 もう話すことなんてない。
 だけど、私がこの数ヶ月レジスと過ごして芽生えたこの気持ちは嘘ではないから、最後にこれだけは言わせてもらおう。自分なりのけじめとして。

「私、レジスのことを本当に――好きだったのよ」
「――!」

 本当は、ずっと言いたかった言葉を、こんな形で伝えたくなんてなかったけれど。
 レジスの目は大きく見開かれ、ふっと息を呑むのがわかった。
 
「……さよなら」

 硬直したようにその場に立ちすくむレジスに私は冷たく言い放つと、涙を堪えて食堂を後にした。
 
 部屋に戻ると、出番がなくなり寂しげにテーブルの隅に置かれたままのタロットカードが目に入った。
 ……あのときレジスにした占いは、当たっていたということか。
 見事なまでの関係の崩壊。今まで積み上げてきたものは、容易く音を立てて崩れ落ちていく。

 引き出しを開ければ、クリスマスにレジスからもらった髪飾りが大事に仕舞われていた。
 叩き返してやりたいが、そうもいかない。
 でも持っていると、この水色を見るたびに、レジスとの楽しかった思い出が映画のように頭の中に流れだす。
 どのシーンに映る私も、あんなに幸せそうに笑っているのに。

「うっ……うぅ……」

 私は髪飾りを胸に抱え、ずるずるとその場に座り込む。
 私の涙が、大好きだったひとと同じ水色を、絶え間なく濡らしていった。

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