モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「みなさーん! 本日をもって退学となるフィーナ・メレス嬢から、お別れの挨拶をしたいとのことです!」

 エミリーの呼びかけで、会場中の視線が私へと集中する。
 
「フィーナが退学!?」
「あの子って、ずっと停学中だった子よね?」
「寮ですごく人気者って聞いたけど、前はエミリー嬢の金魚の糞だったのよ」

 私をよく知る寮生の仲間は驚きの声を上げ、関わりのなかった生徒はヒソヒソ話をしながら好奇の目を向ける。

 今までエミリーが私が退学するなんて格好のネタを、周りに沈黙し続けていた理由がわかった。
 エミリーの目的は、ここで私を晒し者にすることだったのか。

「なぜフィーナが退学なの!?」

 何度かサロンに足を運んでくれていた寮生のひとりが声を張り上げると、エミリーが自分語りを始める。

「実は彼女の学費は今まで、遠縁の我がルメルシェ家が負担していたんです。私は入学当初、友達ができるか不安で、フィーナに学費を出す代わりに私の友達になってもらうことをお願いしたのですが……悲しいことに、フィーナは途中からそれを拒みました」

 嘘とは言い切れない絶妙なラインを攻められ、私は口を挟むことができずにいた。
  
「私はひとりになりました。そのことに怒った私の父が、すぐさまフィーナを退学にしようとしました。でも私は、フィーナがまた友達になってくれることを信じて停学に留めてくれと懇願したのです。ですが私の思いは伝わらず、フィーナは私と関わるのを拒み、挙げ句の果てには学費を出せと脅迫を……」
「! そんなこと言って――」
「でも! やっぱり私にとってフィーナは大切な友達です! 父の説得に失敗し、これ以上学費の援助はできず、フィーナは退学することになりました。最後にお世話になったみなさんに別れの言葉を言いたいという私の友達の願いを、ぜひ聞いてあげてください!」

 迫真の演技で、涙を流しながら頭を下げるエミリー。
 行き過ぎた自己中な行動で、痛い目で見られることが多々あった彼女に、今は同情の眼差しが集まっている。
 一方私に向けられるのは、白けたような、冷めた視線だ。

 公爵家という権力のあるエミリーと、援助を受け学園に入学した私。
 どちらの味方が多いかなど、考えずともわかること。
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