秘密事項:同僚と勢いで結婚した
甘やかな残業日

李side


ただいまの時刻は夜の20時過ぎ。


予想通り仕事が終わらせられなかった私は空腹を誤魔化すように水を飲んだ。


1日1日を無駄にしないように、着実に仕事を捌(さば)くために集中していたのだが…。


その集中が呆気なくプツンと切れて私は椅子の背もたれに身を委ねている。


「さすがにこの時間になるとあまり人いないよな。」

「…穂高くん、先帰ってて良いのに…」

「一緒に帰るって約束したじゃん」


こんなにも忙しく働いている私の隣にある椅子に座り、仕事を終えた穂高くんはのんびりと寛いでいた。


(仕事ができる営業部の期待の星ことハイスペック穂高様は良いですよね!)


彼は効率がいい。『遅くまで残業だ』と言いつつも、圧倒的な仕事量を素早く仕上げる。そして私よりも絶対に早く帰宅するのだ。


「……約束したけど、多分、あと30分はかかるし。……早めに帰ってご飯炊いてて欲しい。」


結婚しているのは秘密事項だ。周りに誰もいないことを確認して、遠回しに『帰って』と伝える。

が、そんな気遣いも虚しく…。


「………夜道、危ないから待ってる。晩ご飯は買って帰るか食べ行こ。」


と、返された。


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