先生がいてくれるなら①【完】

しばらくして、ポケットに入れていた携帯がブルブルと振動する。


恐らく立花からメッセージが来たのだろう。


見なくてもその内容は推察出来た。



立花はきっと今頃ヤキモキしてる事だろう。



すぐには読まずに、授業を全て終えて立花が帰宅したであろう頃に『夜に電話する』と短いメッセージを送った。



仕事を適当に切り上げて一度自分のマンションに帰り、身支度を調えて車で立花の家へ向かう。


外出許可を貰っておくように言うのを忘れていて、失敗したなと思ったが母親は夜勤だと言うので車で外へ連れ出した。



「先生、すみません……」



申し訳なさそうに謝る立花。


いや、本来謝るべきは俺だと言うことをコイツは知らない。



「誰かに見られる可能性があることは想定の範囲内」とか言いながら、本当は倉林にあえて目撃させた。


それが結果的に火に油を注ぐ事になったような気がして、イライラしている。


完全に自業自得なのだが──。


< 191 / 455 >

この作品をシェア

pagetop