先生がいてくれるなら①【完】
あの時──。
倉林が強引に抱き寄せただけだと、思いたい。
「──お前さ、倉林と付き合ってるの?」
立花の顔を覗き込んでそう尋ねると、何のことか分からないのか首を傾げる。
俺が「校舎裏」と言うと、今日の出来事を俺に見られていたことに気付き、慌てて両手で顔を隠した。
車内は街灯の明かりが少し差し込んではいるが、決して明るいわけではない。
表情こそ見えはするものの、顔が赤くなっているかどうかまで見えるわけでは無かったが……。
これは明らかに赤面してるのを隠す反応、だよなぁ。
──むかつく。
「抱き合ってたのに、付き合ってないんだ?」
意地悪くそう言い放つと、立花が焦って言い訳を始める。
それがまた気に入らない。
──あぁ、これはもう、認めた方が良いのかも知れないな。
俺は、コイツが好きなんだ──。