先生がいてくれるなら①【完】

私は頭が真っ白になったが、とにかく机に置いていたペンケースとプリントを鞄に突っ込み、担任の先生に小さく会釈をして藤野先生と一緒に教室を出た。



廊下を小走りで昇降口へ向かう途中、藤野先生が「タクシーを呼んであるから」と言う。



「お金は払ってあるから、降りたらすぐ受付で場所を聞いてお兄さんの所に向かえ。分かったか?」



先生の言葉に、コクコクと頷く。


上履きを履き替えるのももどかしい。



普段は迎えのタクシーでも正門の中には入ってこないけど、どうやら藤野先生が昇降口前まで入って貰うように手配してくれたらしく、靴を履き替えたらすぐにタクシーへと乗り込むことが出来た。


「せんせ……」

「運転手さん、お願いします」


タクシーのドアが閉められ、心配そうな顔で見送る藤野先生をその場に残して、タクシーは病院へと走り出した。




< 297 / 455 >

この作品をシェア

pagetop