先生がいてくれるなら①【完】
「なに唸ってんの」
ふいに聞こえる、悪魔の声──ではなく、藤野先生の声。
私が長机に突っ伏して倒れ込んでる間に、準備室からこっちに来ていたらしい。
「あー、うー。暑いぃ、分かんないぃ、うがぁー、がおー」
「それでなくても暑いから、やめろバカ」
「あー、ジキル藤野先生が暑さでバグってるー。バカとか言ってるー」
「うるさいよ。起きろ」
先生に頭をツンツンと突かれ、私はしぶしぶ上体を起こした。
「……今の先生はジキル博士ですか、ハイド氏ですか?」
「お前、命知らずだな……」
先生の顔が引きつっているけど、部屋の暑さと課題の難しさとでもうそんなの気にする気力すら無い。