先生がいてくれるなら①【完】
「今日の事、学校で誰にも言うなよ」
俺の本来の姿がこんなだと分かれば、また以前と同じ事が起きかねない。
面倒に巻き込まれないためにも、これだけは釘を刺しておかなければ。
立花が分かったと素直に頷いたので、俺は掴んでいた手を離した。
「送って頂いて、ありがとうございました」
きちんとお礼も言えて礼儀正しい態度だが、危機感が無いのは困りものだ。
数学の課題をきちんとやるように言うと忘れていたような反応をしたので、すかさず「忘れたらお仕置き」と俺が言うと、本気で焦った表情をした。
本当に忘れそうだから何か考えておいてやろう。
何が良いかな。
車から離れる前と家の中に入る前にこっちに向かってお辞儀をする立花。
ホント、礼儀だけは正しいんだけどな。
立花がドアの向こうに消えるのを見届けて、俺はゆっくりと車を発進させた。