先生がいてくれるなら①【完】
「えっと……先生は、数学を教えたかったから高校教師になったんですか?」
と、さりげなく、部室での話題の続きに繋げてみる。
「……いや、高校教師になりたかったわけじゃない。本当は数学者になりたかったかな」
「数学者……。なんでそっちの道に行かなかったんですか?」
「数学者なんて職業じゃ、食っていけないから」
「……ふぅん?」
「研究職なんて、基本的に儲からないから。まぁ高校教師も忙しいばっかりで全然儲からないけどな」
「そうなんだ。でも、先生ぐらいの頭脳があれば、医学の道に進む事も出来ましたよね? それとも本当に数学だけがやりたい事だったんですか?」
「──そこに繋げるか。お前、意外と策士だな」
ぎくっ。
やっぱり先生、頭の回転が速すぎる。気づかれたか。