先生がいてくれるなら①【完】
「……医者になる気は全く無かったな。その道だけは避けたかったし」
「お父様の影響ですか?」
「そう」
「でも、弟さんは医学の道に進んだんですよね」
「兄弟だからって、同じ考えなわけじゃないだろ」
「そりゃまぁ、そうですけど」
「……そっちの道は、弟たちに譲ったんだよ」
「譲った? え? なんでですか?」
しばらくの沈黙の後、先生は私から目を逸らして呟いた。
「────俺だけ母親が違うから」