俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~

週末は、親父と剣軌か、鈴代のおばあさまのどちらかが必ず面会に来てくれていたし。

だから、寂しくなかった。頑張れた。

けど、ママは一度も会いに来てくれなかった。



総本山の修行を終えて、札幌に帰ると…ママはいなくなっていた。

親父と離婚して、フィリピンへ帰ってしまったという。



『大人には大人の事情がある。子供にはどうも出来ないことなんだ。だから、優さんを責めちゃいけない』

『絶対に泣くな。メアリに会いたいって間違っても優さんに言うな。堪えろ。全部堪えて強くなるしかないんだ』



わかってる。何となくわかってるよ。剣軌の言いたいこと。

どうもならない事情だったんだ。だから、ワガママ言って責めて親父を悲しませちゃいけない。



涙、悲しみ、弱さ、全て堪えてこそ、強さ。

そう信じて、何もかも堪えてここまで来た。

それが強さへ変わると信じて。






嬉しかったこと、悲しかったこと。

楽しかったこと、全て…今までの記憶が、どんどん過ぎって行く。

フィルムのコマ送りのように。



これは、走馬灯ってやつだろうか。



…あぁ、私。

もう…死ぬのかな。




< 423 / 528 >

この作品をシェア

pagetop