俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
艶々とした漆黒の翼が背中から生えた、細いフォルムの青年が、その翼をバタバタをはためかせて目の前に舞い降りる。
不気味な笑みをこっちに向けながら。
橘社長は初対面なので『…誰だ?』と、傍で呟いていたが。
私は…知っている。
この男…先月、半人半魔の契約が行われていた現場に親父や剣軌、警察と踏み込んだ時に、奥の方にいた。
親父の『相殺』によって、人間へと戻される仲間を助けずに一目散に逃げていった男だけど。
『…我が名は、リグ・ヴェーダ』
そう名乗る彼の手には、細かくて黒い羽毛が無数に。
風に乗って、バサバサと渦巻いている。
…何故、こんなところで急に?!
一般人、橘社長もいるのに、結界も張らず!
突然訪れた臨戦態勢に、緊張が走る。
『なずなっ…!』
『しゃちょー、下がって!』
何が狙いかはわからない。
だけど、私の傍にいる社長だけは護らなければならない。
例え、私がまだ経験値の足りない新米陰陽師であろうと。
…どうする?
まずはヤツを結界に引き込んで…。