俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
「それで逃げたつもりか?…このっ!」
「………」
この期に及んで逃げるという行動にカチンときてしまう。
手にしていた肉をそっとテーブルに置いてから、なずなの被った布団に手を掛けて引っ張る。
しかし向こうも力は強く、なかなか布団を取り上げることが出来ず、なずなは頭まで布団をすっぽりと被ったまま姿を現さなかった。
無言で何も言わないし、このっ…!
「…ここまで言わせておいて、逃げるなんて卑怯だぞ!」
ムキになりまくって、なずながバリケードにしている布団の塊に向かって叫び掛ける。
ちょうど頭がうっすらと浮かび上がっている部分に向かって。
すると、その布団の塊から僅かにボソボソと声が聞こえる。
…はっ!喋った!
慌てて耳を近づけた。
「…え?…何?」
「……す…たんだ」
「…え?だから何!」
だが、布団越しじゃとても聞こえづらい。
そのため、聞き返してしまう。
しかし、聞かなければよかったのか、何なのか。
事実をはっきり耳にして、脳内が未曾有の混乱に陥り。
俺って、なんて事をムキになって聞き出してしまったんだ…と、後悔するのは間もなく。