記憶シュレッダー
その日の夜。


あたしと伯母さんは祖父の書斎にいた。


これからこの部屋も片付けていかなきゃいけないんだろうけれど、今はそんなこと考えている余裕はなかった。


「これ懐かしいわね。お父さんの写真よ」


伯母さんが本棚からアルバムを一冊抜き出して床に広げた。


写真はどれも色あせていて、若いお祖父ちゃんが写っている。


「お祖父ちゃん、楽しそうに笑ってるね」


「写真を撮るときはいつも笑顔で写ってたのよ。ほら見て、これなんか珍しく釣りをしている写真よ」


伯母さんに言われて視線を向けると、お祖父ちゃんと見知らぬおじさんが2人で釣りをしている写真があった。


あたしは食い入るようにそれを見つめる。
< 152 / 213 >

この作品をシェア

pagetop