記憶シュレッダー
☆☆☆

家に1人になったあたしはシュレッダーの前に座っていた。


手にはカナヅチを握り締めている。


お祖父ちゃんはこれを使って色々な記憶を消してきた。


そして、きっとあたしも同じように……。


そこまで考えて唇をかみしめた。


どんな記憶を消してしまったのか、これを壊す前に確認しておいた方がいいかもしれない。


どんな記憶であれ、それがあたしが経験したことなのだから。


怖いけど、逃げていたって現実は変わらないんだから。


あたしは大きく息を吸い込んで布を外した。


シュレッダーは相変わらずそこにあり、妙な魅力を放っている。


これを使えば、お祖父ちゃんが死んでしまった事実さえ消し去ることができるのだ。


そうすればきっとあたしの心は楽になるだろう。


けれど、お祖父ちゃんとの思い出はすべて消えることになる。


そんなことにはさせない。
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