最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
口元を緩め、さっき聞いたばかりの性別を教えた。女性はくっきりとした二重の瞳を羨ましげに細める。


「いいなぁ。私は今日が初診だから、いろいろと心配で」
「そうなんですか!」


お腹はまったく膨らんでいないから、婦人系の病気の検査という可能性もあるなと思っていたら、妊娠の超初期だったのね。

私も最初はすごく不安だったっけ。まあ、私の場合は離婚話が出ていたせいだから、不安の種類がまた違うだろうけど。

自分と重ねて共感しつつ、彼女に微笑みかける。


「赤ちゃん、順調に育ってくれるといいですね」
「ええ、お互いに」


朗らかに返す彼女からは幸せそうなオーラが漂っていて、こちらまでほっこりした。

ほんの数分、マタニティートークをしているうちに私が会計に呼ばれ、彼女とはそこでお別れした。

名前も聞かずにさよならしてしまったけれど、また会えたらいいな。そして、彼女も元気な赤ちゃんに会えるようにと願う。

妊婦同士で話をしたのは初めてだったから、なんだか仲間ができたようで嬉しかった。

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