最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
私は周りの皆を見回し、ちょっぴり気恥ずかしさを感じつつお礼を言う。


「皆さん、ありがとうございます。育休が明けて戻ってきたら、即戦力になれるようがんばるので、またよろしくお願いします」


プレゼントを抱えて丁寧にお辞儀すると、励ましの言葉と温かい笑顔が返ってきて、この職場が好きだと改めて感じた。

皆にも菓子折りを配り、帰る前にロッカーの中を整理していたとき、本社のオフィスからいつの間にか戻っていた瀬在さんの姿が目に入った。

キョロキョロしていた彼は、私を見つけるとやや急ぎ気味にこちらにやってくる。


「よかった、一絵さんが帰る前に会えて。産休に入るギリギリまでがんばってくれて、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ! 体調が優れないときも、気を遣ってもらえてありがたかったです」


身体を向き合わせてきちんと挨拶をすると、瀬在さんはなんだか意味深に口角を上げ、手にしていた袋からなにかを取り出す。


「これは、そんな感謝と労いを込めて、社長からの贈り物です」
「えっ……慧さんから?」
「ええ、『出張で挨拶ができないから渡しておいてくれ』と」
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