最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「欠陥を狡猾さでカバーしただけの人間に、社の命運を握らせていていいのか、正直懸念しています。ここにいる皆も不信感を募らせるんじゃないですかね。奥様ひとり大切にできていないようですし──」


好き勝手に言うその口を黙らせたくなり、彼の横の壁にドンッ!と握った手をついた。増田も、他の社員たちも押し黙る。


「私の秘密を暴いて、ご満足いただけましたか?」


俺よりやや背の低い増田を見下ろし、冷笑を浮かべる。オフィスはしんと静まり返っていた。


「私が色弱者なのも、その知識が社内に浸透する頃に公表しようとタイミングを窺っていたのも事実だ。それについては言い訳するつもりはありません」


騙していたつもりなど毛頭ないが、そう受け取られても仕方ない。それは承知しているが、黙っていられない部分もあり、「しかし」と続ける。


「色弱は人によって程度が様々で、その人の個性の一部のようなものです。私は自分が生まれ持ったその性質と向き合って、力を発揮するべくこれまでやってきた。それを〝欠陥〟だの〝狡猾〟だのとおっしゃるのは、私を支えてくれる人たちや社員に対しても冒涜になると思いますが」
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