最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
彼の言う通り、ジョインプレッションの親会社である大手インターネット会社〝エムベーシック〟の社長である私の父は、簡単には首を縦に振らないかもしれない。事業に関しては柔軟なのに、男女関係に関してはザ・昭和な考え方だから。

しかし私の性格をよく知っていて、最終的には私の気持ちを尊重してくれるのもまた両親なのだ。

訝しげにしている慧さんに、控えめな笑みを向ける。


「父は〝一度やってみてダメなら考えろ〟っていうスタンスなので、わりと納得してもらえるんじゃないかと思っています。私は昔から両親の言いつけに反発してばかりでしたが、結局はやりたいようにさせてもらっていましたし、今回のワガママもきっと説得すれば大丈夫ですよ」


私は一応社長令嬢になるが、周りからは冗談だろと思われているくらいまったくセレブ感のない女だ。顔立ちもどちらかと言えば素朴で、目力があるとは言われるが、はっとするような美人ではない。

昔から両親が与える高級な洋服にも食べ物にも興味がなく、安物でも自分が好みのものがあればそれを選んできた。

進学や就職も同様で、とにかく自分が行きたい道を突き進み、今は大好きなグラフィックデザイナーの仕事をしている。
< 5 / 274 >

この作品をシェア

pagetop