釘とパズル
それにしても酷い臭いだ。
獣の臭い、死肉が腐った臭い、動物の死体の臭い。
道路上で車に次々と踏み潰されミンチにされた動物の臭い。
それはチャオの臭いに似ていた。
地表では影のような人の群れが叫び声を上げながら川の流れのようにゆっくりと動いている。
それを神様のように俯瞰で見ていた。
いや私は神なんだ。
これまでに経験した事のない優越感が体を襲う。
うごめく影はまるで虫の死骸に群がるアリの大群を見ているようだった。
私はニヤリと笑い、その群れを見下ろした。

“三毛猫のチャオの死”
坊主頭の少年は憎しみを込めて言った。
「レイナがチャオを殺したんだよ！最後に外に出たのはレイナだったんだから！」
遥か昔の事を思い出して体中に虫唾が走る。
「ごめんなさい・・・」
私は涙を流して何度も謝った。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
どうして私は真実を言えなかったのだろうか？
チャオが逃げたのは君が扉を閉めていなかったからだろ？
本当は知っていたんでしょ？
「私は君より先に外に出ていたじゃないか、君が最後に出て扉を閉めなかったからチャオが死んだんだよ、知っているくせに私のせいにして」
私は坊主頭の少年を見ながら心の中で何度も言った。

私達の目の前に現れたチャオは道路上で原形をとどめていないカタチで嫌な臭いを放っていた。その日から頭痛がして私を狂わせていった。



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