背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 バーテンダーが小さく笑った気がした。

 全くその気が無くなってしまい、この場をどう切り抜けようか息を吐いた時、胸のポケットのスマホが震えた。
 画面には、見覚えのない番号が光っている。


「ごめん……」


 千佳子に断り、席を立った。


「もしもし」

「お困りのようですね……」


 うん?
 そこに居たはずのバーテンダーはいなくなっていた。


「えっ…… まあ……」


 そうか、このバーのテーブルのデザインを頼まれた事もあり、連絡先を知っているのだ。


「私が言うのも失礼ですが、女性の方とのお付き合いも、お考えになった方が良いのでは? それでは……」


 ツー ツー


 通話は切れた。


 カウンターに戻ると、千佳子がこのまま一緒に外へ出る勢いで飛びついてきた。


「ごめん…… 急用が入った。またな……」



 そう言って、千佳子の頭に触れようとした瞬間、頬に衝撃が走った。


 バシッ!


「痛てっ」


「バカにしないで!」


 千佳子は、俺を睨みつけると、勢いよく店を出て行った。


 数人いた周りの客が呆気に取られて、こちらを見ているのが分かった。


 …… 

 頬を押さえて取り合えず椅子に座りなおした。


 おしぼりが目の前に出された。


「仕方ないですね」


 バーテンダーが表情一つ変えずに言った。



「はあーーっ」

 大きなため息が漏れてしまった。


「何か心境の変化でもありましたか?」


 水割りのグラスを俺の前に差し出しながら、バーテンダーが言った。


「俺にも、よくわからないよ」


 俺は、ウイスキーの水割りを一気に飲み干した。


 目を瞑って頭を押さえると、何故か缶ビールを手にして笑っている彼女の顔が浮かんだ。


 
 次の日の夜、スマホから由美の名を出した。千佳子だったからだ。正直、ああいう女は好みじゃなかった。
 由美ならどうだ? ふわりとした感じの、可愛らしい女だ。

 ホテルまで行ったのに、その気になれず、腹が痛いと帰ってきてしまった。


 香にも有紀にも、俺の身体は何も反応しなかった。

 どうしてだーーーーっ
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