背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「うーん。さすが私の弟ね。完璧!」

 姉ちゃんは満面の笑みで、俺を頭のてっぺんからつま先までまじまじと見た。

「はあ……」
 
 ため息しか出ない。

「ほんと昔から、顔とスタイルは良いのよね。後は性格だけよね。絶対に康介に恥かかせる事はしないでよ!」


「はい、はい」

 義兄の康介さんには、色々とお世話になっている。こんな悪魔のような姉の旦那に何故なったのかと思うほど、温厚で仕事もできるよい人だ。
 俺だって康介さんには迷惑かけたくはない。

 姉ちゃんが広げた俺のシャツやらネクタイが、ソファーの上に散らかり呆けている。俺はネクタイを広いあげ、クローゼットへと戻した。


「あんたそういう所はきちんとしているわよね。部屋も男の一人暮らしには珍しいくらい片付いているし。」


「ああ…… だから、嫁なんて必要ないんだよ」

 俺は、ワイシャツをハンガーにかける手を止めずに言った。

 どういうわけだか、小さいころから、物が散らかっているのが好きじゃない。その点一人暮らしは、片付けもスムーズに出来て快適だ。
 だから、この部屋に女は入れた事がない。

 勝手に散らかされるのが気分悪い。
 結婚なんてもってのほかだ。
< 11 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop