背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 彼女の居ない隙を見て、冷蔵庫の中身を確認する。
 そもそも、彼女がここに居るのは、冷蔵庫の中身がもったいないという無理矢理な理由だ。
 中身が片付いたら、彼女は出て行ってしまうのだろうか?

 そっと何か買って増やしておこうかとも思ったが、さすがに不自然に思うだろう……

 一週間もすれば、冷蔵庫の中はほぼ空になってしまった……

 彼女がキッチンに立つ気配がして、俺も部屋から出た。

 すると、目の前に冷蔵庫の扉に項垂れている彼女がいた。


 これは、どういう状況なのか?
 冷蔵庫の中身が空なのは確かだ……
 マンションを出る事を決めてしまったのだろうか?


「おい、どうかしたのか?」

 取り合えず声をかける。

 彼女がどんな言葉を口にするのか不安ではあったが、このままでは、マンションを出て行ってしまう気がした。

 だが、彼女から返ってきた言葉は意外な物だった。


「あ、冷蔵庫の扉が固くて開かないような…… アハハ」

 へっ?
 そんな事はないだろう?
 明らかに何かを誤魔化しているのが分かる。


「そうか?」


 それでも彼女の言葉を否定せず、扉を確認する事にした。


「大丈夫そうだけどな。ああ、食材がもう無いんじゃないか? 買い出しに行くか?」


 いかにも今確認したような素振りをした。

 さらっと、さりげなく当たり前のように言葉を流してみる。



「えっ」

 やっぱり、冷蔵庫の中身の事は覚えているようだ。



「他にも必要な物があるんじゃないか? 気の利いた鍋とか、おしゃれな入れ物とか?」

 彼女の不審が言葉になる前に、さらなる提案をする。
 物で釣るなんて、正当ではない事など分かっている。

 でも、少しでも彼女がここに残ってくれる事を選んでくれたらと思った。

 そう思いながらも彼女に考える間も与えず、俺は、半ば強引に買い物へ行く準備を促がした。 

 俺はずるい……


< 155 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop