背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 多めのポテトサラダやおしたしをタッパーに詰めた。今夜用に、ハンバーグ。ひじきの煮物や豚の角煮と煮魚など冷凍庫に入れる。日持ちしそうなおかずも何品か作った。
 今日はグアムに出発する日だ。


「何しているんだ?」


 寝室から出てき彼の声に、顔を上げた。

 本当だ。朝早く起きて、何しているんだろう?

 ……

 すぐに言葉を返さない私を、怪訝そうな顔で彼が見ている

 
「あっ…… 今夜の夕食と日持ちするおかずもあるから。冷凍庫の物はチンすれば食べられるから?」


「えっ。あっ。ありがとう……」

 そう言った彼の顔が驚いたように見えて、急に不安になった。

 冷蔵庫の扉を閉めて、カウンター越しに立つ彼の顔を見て思う。

 頼まれてもいないのに作り置きなんかしてしまって、図々しかったかもしれない。それに、彼だって夕食の予定もあるだろうし、たまには好きな物を食べたいかもしれない。


「あ…… 勝手に作っただけだから、食べなかったらそのままにしておいて。冷凍の物はしばらく保存出来るから」
 
 慌ただしく、シンクの周りを片付けながら言った。


「飯用意するのも面倒だから助かるよ。時間大丈夫なのか? 片付け俺がやるから、支度すれば……」


「えっ?」


 壁に掛けてある時計に目を向ける。


「ひやーっ。もう、こんな時間! ごめんなさい」


 エプロンを外しながら、パタパタと廊下を行ったり来たりする。


「いってきます!」


「気を付けていけよ!」


 彼の声を背中に受けながら、玄関の扉を閉めた。


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