背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 廊下の先から、秘書課の河合さんに案内されて近づいてくる姿に、彼と同時に声を上げた。
 そして、彼と顔を見合わせた。

「美月も悠麻君も、久しぶりだな」

 相変わらずダンディにジャケットを着こなしたおじい様が微笑んだ。


「おじい様、悠麻さんと知り合いなの?」

「おお、知らなかったのか?」

「そんな事、聞いてない!」

 役員フロアーである事も忘れ、声を上げてしまった。


「会長、ご無沙汰しております。そうか…… 湯之原……」

 彼は、片手で頭を押さえた。



「なんだか、騒がしいようですね。会長、市川君も部屋へお入りください」


 廊下の奥のドアが開き、常務がにこやか近づいて来た。


 乗務室に案内され、なぜかソファーに私も座っていた。
 お茶を入れてくれたのは、河合さんだ。なんだか、可笑しそうに笑みを含んで、私にまでお茶を置いてくれた。


「おじい様、どういう事?」


 おじい様は、お茶を一口飲むと、なんの事だかというように、天井を見上げた。


「おじい様と悠麻さん、どういう関係なの?」

「ああ、その事か? ただの悠麻君の家具のファンだよ」

 私は悠麻さんの方へ目を向けた。


「会長には、数年前から、時々家具のオーダーを頂いているんだ」

 そうだったのか。
 確か、悠麻さんは義理兄の康介さんから、私を紹介されたって言ったけど、おじい様も一枚からんでいたって事なんじゃないのだろうか?


「ねえ、おじい様。おじい様も、あのお見合いに関係あるの?」


「いいや、わしは、美月に合いそうな、良い男がおると言っただけだ」


 やっぱり……
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