背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 えっ?
 妹?
 あ、そういう事か?

 一気に顔が冷たくなった……


 そっと、彼の方を見ると、明らかに冷たい笑みをこちらに向けていた。

 やばい……


 
「私、TVではピアノ弾いてないのよね?」


 お姉さんが、ぼそっと言った。

 確かに、私は市川友梨佳のピアノを聞いたことがない。トークでファンになっただけだ。

 私は何をやっているんだ……



「それじゃあ、皆さんお揃いのようなので、二次会の方へご案内致します」


 康介さんが、皆の先頭に立って歩きだした?

 えっ?
 二次会ってなに?

 見合いに二次会なんて聞いた事ないよ?
 これで、帰れるんじゃないの?


 思わず、ママのスーツの袖を引っ張った。

「うふっ。ママ二次会をとっても楽しみにしていたのよ」

 ママがニコリと笑顔を見せるが、明らかに黙って付いて来いと目が言っている。


「はい。当ホテル最高級のラグジュアリールームを用意させてい頂きました」

 康介さんが、エレベーターのボタンを押しながら、私にほほ笑んだ。


「うわっーー」

 思わず声が漏れてしまった。


 このホテルのラグジュアリールームの特集番組を先月見たばかりだ。

 大きなジェットバスやら、高級ソファーのリビング。広いテラスで夜景を見ながらワイン。
 本当に素敵で、一生に一度でいいから泊まってみたいと思った。


 ラッキー

 そんな高級な部屋に入れるなんて思ってもみなかった。


「悠麻のデザインした家具が置かれているんですよ。是非見てやってください」


 彼の父が、漫勉の笑みを浮かべて言った。
 そう言う事か……
 
「楽しみですわ」

 一応そんな事を言っておいた。


 エレベーターを待ちながら、彼の方に目をやると……

 なんと彼はまだ、さっきの場所で茫然と立ち尽くしていた。

 ええ! 
 まさか、逃げようとしているんじゃないわよね?


 だが、彼はお姉さんに引きずられ、エレベータの前へ来た。


 そして、我に返ったように、また、胡散臭い笑顔を私に向けた。
 


 こっちだって、好みでないのでごめんなさいと、この場で断りたいわよ!


 
 チンッと、エレベーターの扉が開いた。


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