背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 ちゃっぷんっ


 バスタブに浮く花びらを両手ですくって自分の肩にかけて見る。


 わーっ。

 こんな綺麗なお風呂に入ったのは始めて。


 足を思いっきり伸ばしても、まだ余るほどの広いバスタブ。
 映画のワンシーンに出てくるマダムにでもなった気分だ。


 ふっと自分の胸へ目を落とす。
 熱いシャワーを浴びれば消えると思っていたのに、彼に触れられた感覚がまだ胸に残っている。


 今日会ったばりの見合い相手に、裸を見られ、胸まで触られた。

 出来る事なら夢であって欲しい……

 そう思って、バラのお湯を今度は頭から掛けてみたが、夢は覚めなかった……


 どうも、現実の出来事らしい……




 体を大きなバスタオルで巻いて洗面所に立つ。

 下着も着替えもない。
 かと言って、また、着物を着る気にはとてもなれない……


 洗面台には、このホテルのブランドのコスメが一式そろっている。
 ちょっと、嬉しくなって顔を整える。

 有難い事に、試供品ほど小さな物だが、化粧品もそろっている。
 そうは言っても、三十手前のすっぴんを人様にお見せ出来ない。
 薄くファンデーションを塗り、控えめな色の口紅で取り合えず顔を作った。


 はあっーーーー


 ずっとこのままと言うわけにもいかない。
 仕方なく、素肌にバスローブを羽織ってリビングへと向かった。
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