背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 どのくらい時間が経ったのだろか? 
 それでも、パソコンを開き、メールチェックや必要な書類作成などをしていた。


「あははははっ!」


 突然、リビングの方から、彼女の笑い声が聞こえてきた。気にしても仕方ない。チラリとリビングに目を向けたが、又、パソコンの画面へと目を戻した。

 う~ん。
 気になる。


 彼女の笑い声が繰り返されるたびに、パソコンから目を離してしまう。

 見に行くのも、なんだか気になっていると思われるようでいかがなものか?
 トイレに行くついでならどうだろうか?


 俺は、立ち上がり寝室のドアへと向かった。
 
 トイレに行くのだと自分にいいか聞かせたが、俺の足はリビングの入り口で止まった。


 ソファーに寝ころび、缶ビールを飲みながら、彼女は腹を抱えて笑っている。彼女の目線は、リビングに置いてある大きなテレビだ。どうも、バラエティー番組をやっているらしい。

 テーブルの上には、さきイカの袋とマヨネーズに七味唐辛子の瓶が転がっている。

 そして、彼女がテーブルの上の缶ビールに手を伸ばすたびに、バスローブの隙間からちらちらと、白い太股が見える。


 俺は、どのくらいその光景を見ていたのだろうか?

 ふと、彼女が俺の方を見た。

 しまった……

 太股を見ていた事を気づかれただろうか?

 彼女が起き上がった。


「あっ。ビール持ってきますね」


彼女は、バーカウンターの奥の例倉庫へ向かった。


…… ……



 彼女は持ってきた缶ビールを、俺に手渡した。


「良かったら、さきイカもどうぞ」


 彼女はそう言って、また、ソファーに寝ころんだ。


 俺はテーブルの上に転がった七味唐辛子の瓶を起こすと、ソファーへと座った。


 プシュッと、缶ビールの蓋を開けた。


 そして、俺は彼女の笑い声につられ、テレビの画面へと目を向けた。


 気付けば、ソファーに寝ころび、さきイカくわえてテレビを見て、声を出して笑っていた。
 時々、彼女と目を合わせて笑い合った。


 テレビを見て笑うなんて、何年ぶりだろうか?
 たまには、いいかもしれないなどと思ってしまった。

< 64 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop