背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
変わっていくもの……悠麻
 チェックアウトを済ませ、ロビーに戻るが、彼女の姿は無かった。

 エントランスに目を向けると、彼女がタクシーに乗り込む姿が見えた。慌てて追いかけるが、タクシーは走り出してしまった。


 大きく息を吐く。
 俺は追いかけて、どうするつもりだったのだろうか?


 見合いをした手前、家まで送るのが当然という、常識的な判断をしただけなのか?
 それとも、罪悪感からか……
 どちらも、あてはまらない気がする。


 何にせよ、彼女が俺を待たずに行ってしまったと言う事は、もう、会いたくないという理解をすべきなのだろう。

 どうする事も出来ず、俺も駐車場へと足を向けた。


 マンションに戻ると、どっと疲れを感じソファに座り込んだ。


 一体なんだったんだ……


 こういう場合どうすりゃいいんだ。
 行きずりの女なら、一晩限りと割り切って済ませられる。

 見合いの相手にその日の夜って、あり得るのか?
 俺は男だからいいとなるのかもしれないが、彼女はどう思っているんだろうか?


 申し訳なかったと思うが、あの状況で俺は理性を保つ事は出来ない。

 考え始めると、彼女の綺麗な身体が目の前をちらつき出す。
 参った……


 やはり、彼女に連絡ぐらいはしておくべきなんじゃないだろうか?
 もしかしたら俺は、彼女となんらかの繋がりを持ちたかったのかもしれない。

 しかし、彼女の連絡先など知らないのだ……


 良く考えれば、身体の全てを知ったと言ってもいいくらいだが、彼女の家も勤め先も知らない。 
 いや、もしかしたら見合いの場で聞いてのかもしれないが、記憶に残っていない。

 どうすりゃいいんだ……


 思わず大きなため息が漏れた。
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