約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「俺としては十分な収穫だけど」

 弘翔がぼそっと呟く。言葉の意味が分からずに首を傾げると、破顔した弘翔にするりと頬を撫でられた。

「だって愛梨の生理が終わったら、してもいいって事だもんな?」
「え……う…、……はい」

 はっきりと口にされて『収穫』の意味を知る。弘翔が何を考えているのかを理解し、言葉に詰まりながらも顎を引く。

「楽しみにしてるから」
「期待されすぎても……困ります……」

 さらににやりと笑われてしまうと、急に気恥ずかしさが押し寄せてきた。

 実際には無理なものは無理だが、あのまま流れでどうにかなっていた方が、後で思い出した時に恥ずかしくなかったんだろうなぁ、と思う。弘翔の言う『次』の時は、今日よりよっぽど勇気がいるような気がする。

 今から恥ずかしがってどうする、いやでも、きっと、と悶々していると、弘翔がベッドに倒れ込んで、空いたスペースをぽすぽすと叩いた。

「やっぱり一緒に寝ようか、愛梨」
「え、いいの? 狭くない?」
「大丈夫だよ」

 だからおいで、と微笑まれたので『うん』と返事をして弘翔の隣に横になる。リモコンを操作してライトの明かりを消すと、弘翔が『おやすみ』と呟いた。

 もう一度小さなキスを重ねると、そっと身体を抱かれる。程よく筋肉がついた腕が身体にあたると少しの違和感があったが、それ以上に肌から伝わるぬくもりが心地いい。

 瞳を閉じた恋人の顔を、窓辺から入る薄明かりの中で眺める。玲子や崎本課長は雪哉の整った顔立ちを褒めるが、弘翔も男性的でかっこいい顔をしていると思う。それが彼女の欲目だと言われれば、返す言葉も見当たらないけど。

(それに、弘翔は優しい。ユキとは全然違う)

 顔は好みがあると思うが、性格は優しい方がいいに決まっている。そういう意味では、雪哉と弘翔は比べるまでもない。
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