約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
最終章 Side:愛梨

恋する乙女の瞳に


 玲子とお昼のタイミングが合わず1人で社食を食べていると、1週間ぶりの出勤となった友理香が愛梨の傍にやって来た。

「友理香ちゃん、ここ座る?」

 促すと友理香が目の前の席に腰を下ろしてくれる。最後に見た顔面蒼白からは幾分か顔色を取り戻していたが、やはり元気がないままだった。その萎れた表情のまま、友理香がそっと口を開く。

「愛梨、この間はごめんなさい。謝って済まされることじゃないけど……」
「ううん。大丈夫だよ」

 しょんぼりと俯いた姿を見て愛梨が首を横に振ると、顔を上げた友理香の表情が少しやわらかなものに変化した。その笑顔に、密かに魅了されてしまう。女の愛梨でも惚けてしまうほどに美人の友理香には、もっと笑っていて欲しいと思うのに。

「あの後、雪哉にすっごい怒られたの」
「えぇ、あれからまだ怒ったんだ? もういいのに」

 友理香が悲しそうに俯くので、つい愛梨の方が呆れてしまう。

 あの日から数日後、愛梨は雪哉から直接謝罪を受けた。『愛梨が望まないような対応はしない』と話していたから穏便に済んだと思っていたのに、実は更に友理香を叱った後だったとは。

 仕事に私情を挟んで愛梨に迷惑かけた友理香を叱るのなら、資料室で無理矢理キスした雪哉も十分同罪だと思う。それなのに友理香だけ厳しく断罪するのはどうなのだろう。とは言え、それは誰も知らない話なので、愛梨以外に雪哉を注意する人もいないのだけれど。

「私、本当は自分から本社に報告しようとしたんだ。悪い事したのは私だから、ちゃんと罰を受けるべきかなって」

 肩を落とした友理香が口にした言葉に、思わず目を丸くする。
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