約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
(ユキー!? お願いだから余計なこと言わないでー!!)
心の中で絶叫する。不思議そうに両親の顔を見て首を傾げる雪哉の横顔を凝視すると、雪哉がそっとこちらを向いた。
(私、まだ家族に彼氏が出来た事、言ってないの~~~!)
弘翔と付き合って、まだ2か月ほど。しかも初めての彼氏。気恥ずかしさから、こういう恋愛事情を親にどうやって報告していいのかわからず、現状では放置している状態だった。
雪哉には知られてしまったが、まだ親には知られたくない。弟にも。だからお願い、言わないで、と必死に目線で訴える。
けれど雪哉は愛梨の心情を綺麗に読み間違えたらしい。愛梨に微笑みを1つ送ると、両親に向かって子猫のように首を傾げた。
「俺が愛梨を貰っても、いいんですか?」
雪哉がさらりと言い放った問いかけに、ふとリビングの中の時空が捻じ曲がった。
「………………へ?」
先程、恥ずかしいとさえ思った親子の血の繋がりは、こういう時に綺麗にリンクするらしい。同じ平仮名で短いハーモニーを奏でた親子3人に、雪哉が惚れ惚れするような笑顔を作る。
「じゃあ愛梨に相応しい恋人になれるよう、俺も頑張らないと」
「!!??」
にこやかに言い放った雪哉に、思わず驚愕の視線を向ける。だが驚きのあまり、制止も否定も拒絶も出てこない。
「何言ってるんだ。頑張るのは雪哉くんじゃなくて、愛梨の方だぞ」
「そうよ。雪哉くんがいいなら、今すぐにでもお嫁に貰って欲しいぐらいよ」
両親が愛梨よりも早く現実世界に戻ってきた。そしてマトモなのかそうじゃないのか分からない回答を聞いているうちに、愛梨もようやく元の世界に戻ってこれた。両親に向かって、慌てて手を振る。
「いやいや、ちょっと待ってよ。私、ユキと付き合うとか結婚とか有り得な――」
「愛梨」