約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

 いずれ愛梨と結婚する事は自分の中で決定事項だったし、それが叶わないとは微塵も思っていなかった。けれど愛梨と弘翔の睦まじさを目の当たりにし、最終到達地点までの道程が遠く険しいものだと思っていただけに、この言葉には素直に驚いた。

 どちらかと言えば小賢しい、いわゆる『外堀から埋める』という手法を即座に思いついてしまい、自分で自分に苦笑いした。

「雪哉は腹黒いからなー」

 浩一郎の笑った声が遠くで聞こえた気がした。そうかもしれない。言われたら誤解を招かぬよう否定はするが、実際はどうかなんて、どちらでもいい。腹黒くて、結構だ。

 ここぞとばかりに3人同時に攻め込むと、両親は簡単に陥落した。
 だが1番肝心の愛梨が

「私、ユキと付き合うとか結婚とか有り得ないから、勝手に変な事言わないで」

 と言おうとしていたので、『有り得な』までで切断した。ついでに愛梨の動きを封殺するための仕草を1つ追加させてもらう。

 確かに腹黒い、と自分でも思った。相手の言動に先回りしてその動きを誘導する事を、良心の呵責もなく実行できるところなんかが、特に。


 そもそも、今日の予定を決めた時点で十分腹黒い方法を選んだと思う。愛梨から連絡が来た時点で、彼氏が同席しないことは把握していた。だからあえて、最初は行きたい場所を言わなかった。
< 99 / 222 >

この作品をシェア

pagetop