約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
4章 Side:雪哉

早く好きになって


「ユキは、その……もしかして、私の事、好き…なの?」

 まさかそれすら伝わっていなかったとは思いもよらず、つい不機嫌な声が出てしまった。

 いや、不機嫌なのは最初からだった。
 愛梨が女の子らしいワンピース姿で待ち合わせ場所にやって来たことに喜びを覚えたのも束の間、『河上さん』と名字で呼ばれ、再び厚く高い壁を築かれたように感じた。

 落胆と苛立ちを顕わにすると、愛梨はカフェで会った時と同じく怯えて委縮してしまった。なんとか気持ちを作り直して、出来るだけ平常心を保とうと何気ない会話を続けるうちに、愛梨は昔のような親しさで接してくれるようになった。


 愛梨と両親の楽しそうなやり取りを眺めているとき、ふと衝撃的な言葉を耳にする。

「この子ったら27歳にもなって、未だに彼氏の1人も連れてこないんだから」

 そう言った愛梨の母の言葉に、違和感を覚えた。隣を見ると涙目になった愛梨がふるふると小さく首を振っている。そんな仕草も可愛いと思うけれど、それよりも。

(愛梨の親は、愛梨に彼氏がいる事を知らない…?)

 母親の口振りと、やたらと必死な愛梨の様子からそう判断した。

 どのぐらい付き合っているのか正確なところはわからないが、愛梨と恋人の泉 弘翔はやけに仲が良い。まるで親友のように気の置けない2人の間には、雪哉が入り込む隙が無いとさえ感じていた。

 だから当然、両親もその存在を知っているとばかり思っていた。なのに愛梨の両親は、あっさりと『愛梨を嫁に貰って欲しい』と言い放った。
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