しかくかんけい!
黒板を殴る音が響く。
「もうやめて!!!!」
私はじんじんする右手小指の激痛よりも大きな声で、叫んだ。
しん、とする教室。
殴った衝撃でパサリと落ちる、数枚の写真。
背中に刺さる、無数の視線。
その視線をへし折るように、
ゆっくりと後ろを振り返って、
この沈黙を呑み込むように、
すうっと空気を肺へ送って。
「愛莉を傷付けるのは私だけで十分だ!!!!」
ありったけの声量を、喉と鼓膜がはち切れそうなくらい出して。
固まっている愛莉の手を掴み取り、
ぐいっと引っ張って、
教室を飛び出した。
ガチャン!
と、勢い余って跳ね返った扉は、大きめの音をたてて閉じた。
北風がひゅうひゅうと吹きつける屋上は、走ってきた私たちの体温をじわじわさらってゆく。
でも、私の心は燃えるように熱くて。
この閉まった扉のように勢い余って愛莉をさらっちゃった私のもとへ、不安と緊張が息を切らして追いついた。