SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

「…………」


俺はそれを躊躇する。

しばらく黙ったままでいると美空が俺の手を取った。


「もう! 大人って、なんでそんなに面倒なの⁉︎ 凌駕も結愛も……今は凌駕!」


「……っ⁉︎」


瞬間、何かが体を通り抜けた。

妙な清々しさの後に想いが胸に残される。


「余計なもの、取っ払った。 今の凌駕はすごく素直。 結愛の事だけ想ってる」


「……っ、」


どういう理由かは分からない。

だが、今は結愛だけが俺の胸を占めていた。

屈託のない笑顔……

たまに見せる寂しげな表情、俺を求める細い腕……


「……ゆ、め……」


あの日の想いがここにある。

嘘や建前、偽りなどの余計なものを取っ払った、まっさらで剥き出しな、今にも走り出しそうなとても大きな感情だ。
< 191 / 295 >

この作品をシェア

pagetop