SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「…………」
俺はそれを躊躇する。
しばらく黙ったままでいると美空が俺の手を取った。
「もう! 大人って、なんでそんなに面倒なの⁉︎ 凌駕も結愛も……今は凌駕!」
「……っ⁉︎」
瞬間、何かが体を通り抜けた。
妙な清々しさの後に想いが胸に残される。
「余計なもの、取っ払った。 今の凌駕はすごく素直。 結愛の事だけ想ってる」
「……っ、」
どういう理由かは分からない。
だが、今は結愛だけが俺の胸を占めていた。
屈託のない笑顔……
たまに見せる寂しげな表情、俺を求める細い腕……
「……ゆ、め……」
あの日の想いがここにある。
嘘や建前、偽りなどの余計なものを取っ払った、まっさらで剥き出しな、今にも走り出しそうなとても大きな感情だ。