SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

「……っ!」


弾かれたように俺は走り出していた。

寝起きのままの格好も、裸足も、今は気にしていられない。

所々の水溜りも豪快に足で踏みつけて……


————っ!


小さな人影をこの目で捉えた。

黒いパーカーを着たその人物は雨の中をびしょ濡れで壁にもたれて座っている。


「——結愛っ!」


俺は結愛に駆け寄った。


「……っ……!」


俺の顔を見た結愛が息を殺して凝視する。


「……あっ、 ……えっ、 あっ……」
「——結愛っ!」


俺は結愛を抱きしめた。

10年前よりたくましくなった体を、 今の結愛を、 しっかりこの手で感じ取る……


「……りょう、が……⁉︎」


「……悪かった、 結愛……」


「……凌駕……どうして……」


「お前の事が好きなんだ。 10年前も今も……俺の気持ちは変わっていない。 だから頼む……俺の側にいて欲しい」


「……りょう、が……」


次第に涙声になる結愛を俺はきつく抱きしめる。


「……ねぇ! 結愛いっぱいケガしてるからいっぱいいっぱいキスしなきゃ!」


雨音に混じって遠くから、美空の意味不明な言葉が聞こえてきた……

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