SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

……妙にドキドキしている……


……さっきの気持ちとは裏腹に逃げ出したくもなってくる……


「……っ、」


おもわず息を止めてしまった。

中程まで進んだ左奥に湧人が後ろを向いて座ってる……

いつの間に作られたのか、背もたれのない木のベンチに腰掛けながら、湧人は呆然とハンカチの木を見上げていた。


……あっ、


すぐにあたしはハッとして近くの植木に身を潜める。

後ろ姿をそっと見つめた。


……湧人、 だ……


会いたかった人がいる。

ずっと会いたかった人が、すぐそばに……


「……っ、」


なんだか熱いものがこみ上げる。
嬉しくてじんわり涙も浮かんでくる。 でも——、


……あ、れ……


あたしは湧人の異変に気が付いた。

ひどく落ち込んだ様子が背中を見ただけで分かってしまう。

外は暑いのに、湧人も、湧人の周りだけは寒々としていて、どこか震えているようだった。


……どうしたんだろう……


あたしは気になって仕方がない。

今まで何度か悲しそうな湧人の後ろ姿を目にした事があるけど、こんなにまで弱った姿は見た事がない。
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