花鎖に甘咬み
「……ああ」
そうだ、その通り。
伊織の指摘は的確だ。
いくらでもやりようはあった。
俺は、ちとせを〈外〉に置いてくることが “できた” し、置いてくる “べき” だった。最適解だとわかっていて、それでもその選択をしなかったのは────。
「ちぃちゃんが、じゃなくて、マユが、なんやろ。マユがこの子に執着してる。そうじゃなきゃ、こんなことになってない」
「……」
「ホント、どういう風の吹き回し? 気まぐれでも雪が降るレベルなんよ、あの本城真弓が隣にオンナノコを置くなんてさ」
面倒な詮索だ。
軽く息をついて、何も答えずにやり過ごそうとするが、目の前にいるのはそれを見逃してくれるような男じゃない。
「ああ、もしかして、燈が言ったこと、今さら真に受けた?」
「別に、影響されたわけじゃない。……ただ、一理あるかもな、とは思った」
「『守る人間を抱えているヤツの方が、どこまでも強くなれる』────俺も燈に同意するけどさ。燈の言ってることは正しいと思うけど」
いつだったか、この場所で、燈が俺に言った。
『守る人間を抱えているヤツの方が、どこまでも強くなれる。僕はそう思う。大切な誰かのためにだけ、ある程度限界を超えて力を使える。獣じゃなく、心をもった人間なら』
『真弓は確かにこの街で一番強い。けど、いざという時、お前はあっけなく負けて、アッサリ終わる。真弓には、一番大事なものがごっそり欠けてるから。守りたいと思う存在がいない限り、真弓は弱いまんまだ』
『腐敗した茨すら噛みちぎれない。今のお前には』