花鎖に甘咬み


困惑して、固まっていると。
青葉さんが、不機嫌に言葉を重ねる。



「聞きたいことのひとつやふたつ、あんじゃねえのか」

「……聞いたら、答えてくれるんですか?」

「暇つぶしにな」



青葉さんは、暇がそうとう嫌いらしい。


オリーブブラウンの髪を見つめながら考える。
聞きたいことなら、そりゃあ、こんな訳のわからない状況なんだから、山ほどあるけれど……。



「私、なんでここにいるんですかね」

「ハ? それは〈白〉に捕まったからだろ」


「そうじゃなくて、なんで、私を捕まえる必要があるんですか? 〈白〉のひとたちは、私をこんなところに連れてきて、なにに使おうとしてるんですか?」



真剣な目でまっすぐ、翡翠色の瞳を見つめる。
と、青葉さんは眼光鋭く、睨むように、視線を返してくる。

それでも怯まずに、逸らさずにじっと待っていると、青葉さんは「へーえ」と呟いた。



「お前、肝座ってんな」

「はい……?」

「泣きついてここから出してせがまれるか、あきらめてだんまりするか、どっちかだと思ったけど。こんなところに監禁されて、マトモに会話できるとは、上等だ」



面白がるように青葉さんの片眉が上がる。



「だって、泣きついたって解放してくれないじゃないですか! 絶対! だったらもうちょっと有益な情報が欲しいなと」

「へえ? ま、教えてやんないけどな」

「は、はあ!? さっき答えてくれるって……暇つぶしに……」



なんなんだこのひと。
不誠実にもほどがある。詐欺だ。詐欺で訴えてやる。


頬を膨らませて睨みつけると、青葉さんは軽く息をついて肩をすくめた。





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