花鎖に甘咬み



くすねた……盗んだってこと?
あの 〈黒〉 のひとたちから?


それってそうとうマズいんじゃあ……。



冷や汗たらたらの私に、真弓は余裕そうな笑みをたたえたまま、おそろしいことを言ってくる。




「バレたらタダじゃ済まねえだろーな」




なんの比喩でもなく、ほんとうにそうなんだって、もうわかる。

ぞぞぞ……と腕に鳥肌がたってくる。



だって、そんな大事な鍵奪っちゃってるんでしょ? しかもその鍵でここまで来ちゃった。

きっとバレるのも時間の問題なわけで。




「なんでそんな綱渡りするの!?」

「ちとせが、回転寿司食いたいって言った」

「私のせい……っ!?」

「おー。俺もこの鍵使うつもりはさらさらなかったし。寿司食うのに使えるとは思わなかった、案外役に立つもんだな」




だめだ。
頭抱えたくなってきた……。

つまり、要するに。




「まさか、私の回転寿司食べてみたいって願いを叶えるためだけに、そんなタブー犯しちゃったの……?」

「まあな」

「いいい意味わかんない……っ」




マジで、頼むから。

そういうことなら、そういうことだとはじめにちゃんと言ってほしい。



私だって、べつに命の危機を感じながらお寿司を食べたいわけじゃない。命とお寿司だったら、あたりまえに命の方が大切だもん。

そりゃあ……お寿司はおいしいけれど。回るお寿司は予想以上にとってもとっても楽しいけれど!



「バレなきゃいーんだよ、別に」

「そんな簡単なことみたいに言わないでよ」

「〈薔薇区〉に戻って、すぐに〈黒〉の元に返す。それで元通りだろ」





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