花鎖に甘咬み
「でも、そんなの今更だ。昔から、あの街はずっと狂ってる」
「ちょっと待って、でも、それなら……。ええと、なんであの鍵を〈黒〉のひとたちに預けることになるの?」
あの金色の鍵って、政府の────国の、大切なものなんでしょ。
それを、〈黒〉のひとたちに預けるなんて、それこそおかしくない? あんな、危なそうなひとたちに、どうして……。
「ああ。〈黒〉は政府の犬だから」
「へ……?」
「簡単に言えば、政府の言いなりなんだよ。昔は、〈赤〉と〈白〉の中立を保つ治安部隊だったが、そこに目をつけた政府が〈黒〉と手を組んだ。今じゃあ、〈黒〉は政府側の過激派ってとこか」
「ええと」
増えていく情報に、ややこしい語句たちに。
ぐるぐるぐるぐる頭を悩ませていると、真弓が人差し指で、とん、と私の眉間を押さえた。
知らず知らずによっていた眉間のシワを、ぐいーっと伸ばされる。
「もうこの話は終わりでいいだろ」
「えっ、まだ」
いっぱい聞きたいことがあるのに。
あからさまに物足りない顔をした私を、真弓が鼻で笑う。
「ちっせー頭に一気に色々詰めてもパンクするだけだろ」
「むうう……」
「つか、ちとせは知らなくていい」
思わず、真弓の顔を見上げてしまう。
真弓は、ぽつりと呟いた。
「お前が知るには、“こっち” の世界は汚すぎる。わざわざ堕ちてくる必要もねえだろ」
真弓の言葉の意図はよくわからなくて。
でも、はっきりと線を引かれたことだけはわかった。
“こっち”の世界と“あっち”の世界。
真弓と私の住む世界は違うのだと。
蕪雑に引かれたボーダーラインが、もどかしい。