竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 皮肉を交えた静かな問いかけに、ミレイナは困ったように眉尻を下げた。

「ラルフ様にお願いごとがありまして。私の立場ではお会いする約束は取れないそうなので、ここでお待ちしておりました」
「ラルフに?」

 ジェラールはミレイナを見つめる。
 相当長い時間待っていたようで、寒さから唇は少し青みがかっており小刻みに震えていた。昼間見た際はピンク色に紅潮していた白い肌は、今は青白い。

「ラルフはもう家に戻ったはずだ。あいつはいつも竜化して帰宅するから、ここは通らないだろう」
「え?」

 ミレイナは驚いたように目を見開き、傍目からでもはっきりわかるほどにその茶色い瞳に失望の色を滲ませた。

「そうでございますか。では、明日また出直します」
「待て」

 がっくりと項垂れて戻ろうとするその様子がなんとなく放っておけず、ジェラールは思わず声を掛ける。ミレイナはキョトンとした表情で、ジェラールを見返した。

「どうかされましたか?」
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