竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ◇ ◇ ◇


 その日の午後、ミレイナは早くも困ったことに直面していた。
 ラドンが歩いて岩山に登り、飛ぶ真似をしているのだ。しかし、翼を痛めいているので当然飛ぶことはできない。

 [ラドン! 傷が開いちゃうから戻っておいで!]

 ミレイナは岩山の下から呼び掛ける。しかし、ラドンは首を傾げてこちらを見返すだけで、また同じ事を繰り返そうとする。

(困ったなぁ……)

 昨日怪我したのだから、まだ傷は塞がっていないはずだ。
 あんなに羽ばたく練習をしては、また傷口が広がってしまう。
 どうしたものかとミレイナが頭を抱えていると、俄に四匹の魔獣達が騒がしくなった。

 [ジェラールとゴーランが来たよ!]
 [ジェラール!]
 [ゴーラン!]

 口々にフェンリル達が叫ぶ名前を聞いて、ミレイナは慌ててケープの下の耳と尻尾を消す。背後を振り返ると、すでにゴーランを連れたジェラールは至近距離にいた。

(危なかったわ……)

 ミレイナはホッと胸をなで下ろす。
 ケープのフードを被っているとは言え、出来るだけ自分が獣人だと知られるリスクは減らしたい。

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