竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
「私、なにか不手際をしましたでしょうか?」
「配置換えよ。今日で魔獣係はお終いで、行政区の侍女役。悪い話じゃないわ」

 メイド長は静かに答える。
 メイドには役務によって暗黙の了解の上下関係がある。

 一番上がジェラールを始めとする皇帝やその側近がいる皇宮区の侍女役で、その役務に当たるのは全員が貴族令嬢だ。メイド達の中でも憧れの立場といえる。
 一方、一番下が清掃係で、全員平民出身者で構成されている。そして、魔獣係はさらにその下、誰もやりたがらない外れの仕事とされてきた。

 今メイド長から提案された行政区の侍女役は、王宮の外郭にある各種行政機関でお茶汲みや雑用をする仕事であり、貴族令嬢もいれば平民出身者もいる。
 ただ、清掃係のように汚れることはないしエリートの文官と知り合える機会が多いので、魔獣係よりは遥かに人気がある職場であることは確かだ。

「せっかくのお話ですが、私は今の職場が気に入っております」

 ミレイナは首を横に振る。
 メイド長はそれを聞くと、はあっと息を吐いた。

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