竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
「陛下、どうされたのですか? もしかして、魔獣達になにか?」

 ジェラールはくるりと振り返ると、顔色を青くしたミレイナを見下ろす。その表情は一見すると無表情だが、僅かに寄った眉から不機嫌さが滲み出ている。

「なぜ、魔獣係を辞めた」
「え?」
「なぜ、魔獣係を辞めたんだ。最近見かけないからおかしいと思っていた。魔獣達があれほど懐いていたし、お前も楽しそうだったのに」

 突然何を言い出すのかと、ミレイナは返す言葉がなく口をはくはくとさせる。

 自分だって辞めたくてそうしたわけではない。
 魔獣係をしていたら、ジェラールやそのまわりの人に取り入っていると言われたから、そして、ケープを着たジェラールを下男と勘違いした誰かに部外者を入れていると言われたからだ。

 本当は、それを捲し立ててやりたい。
 けれど、それをジェラール本人に言うこともできない。完全な八つ当たりであることは、ミレイナ自身が一番よくわかっていたから。

(私はやっぱり、ここにいない方がいいのかな……)

 また先ほどのように、アリスタ国に帰りたいという想いが沸き起こる。
 叶うことなら、ジェラールと知り合う前に戻りたいとすら思った。

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