竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 不意に涙がこぼれた。
 自分は獣人だから、きっと獣人の男性以外との恋などできないと思っていた。けれど、本当はありのままで受け入れてくれる人がいてくれたらと、ずっと願っていた。

 ジェラールはミレイナの頬に指を走らせて涙を拭うと、ミレイナを真っ直ぐに見つめる。

「俺には千の宝石より、着飾った高貴な女より、価値があるものがある。ミレイナ、お前が傍にいることだ」

 そして、ミレイナを視線の高さを合わせるように膝を折って跪いた。

「ミレイナ、愛している。俺と共にラングール国に来てくれ」
「はい。私もあなたと一緒にいたいです」

 ボロボロと涙を流して頷くミレイナを、立ち上がったジェラールが優しく抱き寄せる。ゆっくりと顔が近付き、優しく唇が重なった。

 ふわふわとした夢心地の感覚の中、辺りから盛大な拍手のようなものが聞こえた。

 このことがアリスタ国とラングール国の両国で『世紀の一大ロマンス』として大々的に広まり、赤面のあまりにミレイナが文字通り穴を掘って逃げ込むのは数日後のこと。
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